パリでお仕事
初めてフランスを訪れたときに、一目ぼれしたこの街で
暮らしたい、仕事したい
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16: 「恐怖の」電話
DATE : 2008-10-21-Tue  Trackback 1  Comment 0
外国で生活し始めて、ふつうに他人とコミュニケーションできるようになった人でも、これだけは苦手、という人が多い。それは、「電話」。きっと、はじめのころは誰にとっても「恐怖の」電話。顔と顔を合わせていると、お互いの顔が見えるので相手の表情が分かるし、いざというときにはゼスチャーも交えて表現できたりする。でも、電話だとそうはいかないところがくせ者!友人との電話なら緊張もしないけれど、仕事となれば、話は別なわけで。プルプルプル、の軽快な音に、いちいちビクッとする私なのだった。

慣れないうちは、私が電話の近くにいても、同僚たちが率先して電話に出てくれた。ただ、いつまでも甘えているわけにはいかない。そう思うと同時に、「私なんかが電話の対応をすると、逆に迷惑じゃないか?」とも思った。

「私が電話に出ても大丈夫?迷惑じゃない?」
「どうして?もちろんよ」
「だってホラ、フランス語力が十分じゃないし・・・」
「何言ってんの、大丈夫よ!」

たとえば、お客さんからの問い合わせだった場合:相手にとっては、私が在仏歴が一年もない外国人であることなんて知ったこっちゃない。きちんと相手の言っていることを理解し、適切な答えを返さないといけない。ヘタな対応をして、ブティックの印象を悪くしてしまうのはまっぴら御免!でも、そうなりかねない恐怖が頭をよぎる。

本社や他のブティックの同僚からの電話だった場合:私のフランス語力が十分でないことは分かってくれているとはいえ、社員として、他の皆と同じように一人前扱い。「外国人だから」と変な特別扱いされるよりもありがたいし、喜ばしいことなのだけれど、私にとっては冷や汗もの!仕事についての伝達を間違ったりしても大変なので、必死になって受話器を耳に押し当てる。・・・押し当ててみたところで、別に私のフランス語力がアップするわけではないのだけれど(笑)。

プルプルプル!
よし、きたっ、出るぞ!
「ブティック○○○○、ボンジュ〜」
しまった、緊張しすぎて舌を噛んで、ブティックの名前の発音がうまくできなかった!
自分の発音のあまりのおかしさに、思わず笑いそうになるのを必死でこらえる・・・、そんなことが何度あったことか(笑)。内容を理解するどうこうの前に、一番の課題は電話でブティック名をうまく発音することだったりして!?


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15: 同じ単語だけど・・・
DATE : 2008-09-11-Thu  Trackback 0  Comment 0
さて、前回は、私からお客さんへの小さなフランス語レッスンのことを書いたけれど、そんな私自身にも、フランス人のお客さんから小さなフランス語レッスンが繰りひろげられることがあった。

ある日のこと、フランス人のマダムが「serviette(セルヴィエット)が欲しい」と言ってきた。Servietteと聞いて、私は「タオル」という意味しか思い浮かばず、「申し訳ないのですが、Servietteの取り扱いはしておりません」と答えた。

「えっ、そうなの?確か以前にここで購入したと思ったのだけれど・・・。」
はて、昔はタオルの取り扱いがあったのか?それとも、私の単語の聞き間違いか?

「Servietteというと、シャワーのあとに体を拭いたりするもの・・・ですよね?」
自分のフランス語のヒアリングが不安になり、思わずマダムに聞いてしまった。

「ああっ!ごめんなさい!Porte-documents(書類バッグ)というと分かりやすいかしら?」
「Porte-documentsならございます!」
そう、Servietteには、実は「書類バッグ」という意味もあったのだ。全く知らなかった!

「マダム、私、そんなことも知らなくてすみません・・・。」
「何を言ってるの、私のほうこそややこしい言い方してごめんなさいね。」
「今日は、ひとつ勉強になりました!」
「どういたしまして。ふふふ。」

マダムが欲しいものを手に入れて満足げに帰っていったあと、私はすぐに同僚たちに報告。「自信満々にServietteはありませんって言ってしまった、やっちまったよ、私〜!」と。そんな私に、フランス人の同僚たちは愉快そうに笑いながらいうのだった。
「いいの、いいの、ちょっとずついろんなこと学んでいけばいいんだから!あとほかには、Cartableっていうお客さんもいるから、覚えておくといいよ。」
日々、勉強。勉強!(笑)

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14: 小さなフランス語レッスン
DATE : 2008-08-21-Thu  Trackback 0  Comment 0
小さなころから海外に興味を持っていた私は、まだインターネットが発達していなかった時代、いろんな国の人たちと文通(懐かしい言葉!)をしていた。そんな私にとって、世界中のお客さんと会話できることは素直に嬉しく、フランス人の同僚たちとの関係も良好で、毎日仕事に行くのが楽しみだった。

フランス人のお客さんとはフランス語、日本人のお客さんとは日本語、英語圏やその他の国のお客さんとは英語。そしてイタリア人とは・・・、相手は私にイタリア語で話しかけ、私はフランス語で答える、なんてことも(笑)。同じラテン語だからか、イタリア語やスペイン語は、一生懸命聞いてみるとお互いに理解できたりする。近くで聞いていると、とても不思議な光景かもしれない。お客さんと店員が違う言語で話していて、会話になっていないようで、会話になっているのだから(笑)。伝えようとする気持ち、聞こうとする気持ち、これさえあれば、なんとかなるものなのだ!?

また、特にイタリア人やスペイン人にはフランス語を習ったことのある人も多く、巻き舌でフランス語を話してくれることがある。もちろん、英語圏のお客さんでも、こういう人がたくさんいる。うーん、うーん、と単語を探しながら必死に話してくれる姿が、たまらなくかわいいのだ。

「ストラップ(バッグの持ち手)って、フランス語でなんていうの?」
「anseとかpoignéeです。」
「男性名詞?女性名詞?」
「どちらも女性名詞ですよ。」
「ありがとう、フランス語の先生!(笑)」
「どういたしまして!(笑)」

私の母国語はフランス語ではないことは分かっているだろうに、こうやって聞いてくるお客さんも珍しくない。ブティックの中でこっそり繰り広げられる、お客さんへの小さなフランス語レッスン。なかなか和やかな雰囲気でしょう?
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13: 「ふつうに話しかけてくれること」の喜び
DATE : 2008-05-05-Mon  Trackback 0  Comment 0
はじめて接客したお客さんが笑顔で帰って行ったとき、なんともいえない嬉しさがこみ上げてきた。まだ知識も十分ではないし、言葉の壁もある・・・そんな外国人である私の接客に、きちんと向かい合ってくれたマダムに感動した。その日、そのマダム以外にもフランス人の対応をすることがあったのだけれど、やはり、そのたびに感動するのだった。「フランス語でふつうに話しかけてくれる」・・・ただそれだけのことに、いちいち喜んでいた。

実は、日本にいるとき、あるお店で隣のカップルがこんな会話をしているのを聞いたことがある。
「店員さんに聞いてみようよ。」
「でも、あの人は外国人だしあまり分からなさそうだから、あっちの人に聞こう!」
一番近くにいて、手のあいていた外国人の店員を避けたのだ。
全員が全員、そういう考えだなんて思ってはいない。でも、自分の中では勝手に、私もフランスではそういう風に見られるのではないかと思っていたのだ。ところが、そんな考えは間違いだったのだ。間違いであったことに、感謝したい!

お客さんが、ふつうのスピードで話しかけてくれることも嬉しかった。まるで、子どもが大人と同じ扱いをされて喜んでいるレベルのことだから、他人からしたらどうってことないことなのかもしれない。でも、少しだけフランス社会に入りこめた気がして、興奮した。入りこめたなんて、気のせいかもしれないけれど(笑)。とはいえ、やはりスピードについていけないときがあったり、分からない単語も出てきたりするわけで。そんなときには、お客さんは、いやな顔ひとつせず、少しゆっくり繰り返してくれたり、他の単語で言い換えたり、どんなものなのかを分かりやすく説明してくれたりするのだった。
「お客さん運」なんてものがあるとしたら、かなり恵まれていたのではないかと思う。

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12: はじめての接客
DATE : 2008-03-17-Mon  Trackback 0  Comment 1
「すみません、店員さんですか?」
「はい、そうです。お伺いいたします。」

笑顔でそう答えてみたものの、私の鼓動は急に激しくなった。「今日から働き始めた新人なんです」と心の中で言ってみたところで、相手に伝わるはずもなく。実は、どこからどう見ても外国人の私に、フランス人のお客さんは言葉の不安を感じて、簡単に話しかけてこないだろう、と高をくくっていたのだ。予想外の不意打ちに、焦りは大きい。でも、なんとかするしかない。

「以前、一度友達が持っているのを見かけたのだけれど、旅行バッグで、スーツケース型のものはあるかしら。色は、黒か茶がいいわ。いや、でも、やっぱり他の色も見せてくれますか?」
「はい、ございます。スーツケース型の旅行バッグですね。」

さいわい、マダムの言っていることは理解できたし、希望に沿う商品があることも分かった。ただ、その商品の展示してある場所が思い出せない。マダムの希望を復唱しながら、さりげなく店内を見渡して見つけようと思ったが・・・えっと、えっと、どこだっけ。困った私が、ヘルプ!という表情で近くにいた同僚を見ると、待ってましたとばかりにウィンクして、ある方向を指さしてくれた。・・・あった!

「マダム、こちらへどうぞ。・・・こちらに全ての色が揃っています。」

マダムを案内するために移動すると、同僚も距離をおいたままさりげなくついてくる。どうやら、いざというときにはいつでも助け舟を出してくれるつもりらしい。つかず離れずところで見守ってくれているということに、どれだけの安心感を覚えたことか!
いきなり初日にひとりで立たされたことに、日本との違いを感じ、戸惑っていたが、このときに.突然感じた:大丈夫、やっていける!

覚えたばかりの知識で、なんとか質問に答え、商品の説明をした。マダムから反応が返ってきたことが嬉しかった。とはいえ、いきなりスムーズにことが運ぶはずがなく、その後の突っ込んだ質問には対応しきれず、近くにいた同僚がすっと対応に入ってくれたのだが(笑)。
「マダム、私が代わりにお答えしますね。実は、彼女は今日から仕事を始めたんです。マダムが一番初めの彼女のお客さんです。」「まぁ、今日から!」

マダムが、優しい笑顔で最後にかけてくれた言葉は今でも覚えている。
「あなたの最初のお客さんになれて嬉しいわ。がんばってね、あなたなら出来るわ。」
こうして、私のフランスでの社会人生活はスタートしたのだった。
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